奪われなかった「心」・・・仮設住宅で描く洋画家

2011年11月07日

先日、うれしい取材がありました。
場所は東京六本木にある国立新美術館。
現在、開催されている「日展」の取材に行ったのです。

8カ月前、東日本大震災の被災地にANN取材団の1人として取材に行きました。

陸前高田市で出会ったのが、洋画家の鷺(さぎ) 悦太郎さん。
念願の日展に入選したのです。

鷺さんと最初に会ったのは、震災の約1週間後。
家とアトリエ、そして100点あまりの自分の作品を津波に奪われ、
残っていたのはがれきでした。

「今は何もないけど、描くしかないから・・・」。

ぽつりと決意を語った鷺さん。
すべてを奪われても、絵を描く心は失っていませんでした。

そんな鷺さんに、画壇の仲間たちが画材を提供。
鷺さんは仮設住宅の中で、もう一度キャンバスに向かいました。
そして完成した作品が、「路」です。

鷺さんとの再会はもちろん、日展入選作家として取材できる喜び。
会場で作品を目の当たりにし、私にも新たな感動がありました。

絵を描く環境も、材料も不十分な中、短期間に仕上げた作品。
撮影しながら、鷺さんの「執念」のようなものを感じました。

女性の後ろには描かれているのは、寸断された鉄道のレール
そして、遠くには、がれきの山

ふと、8カ月前のインタビューを思い出しました。
あのとき、鷺さんは
「大震災でいろいろな想いはあるけれど、絵のモチーフにはしないと思う」
と語っていたはず・・・。

今回なぜ、がれきやレールを絵に加えたのか―。
作品の前で、鷺さん本人に問いかけました。

「大震災で本当にたくさんの体験をしました。
本当に微力ながらも、自分の表現を通じて、
少しでもそれを表現できれば。」

以前と変わらない控えめな口調で、でも眼差しは熱く、答えてくれました。

なお、日展は12月5日まで東京都六本木の国立新美術館にて開かれています。

そして、うれしいことがもう一つ。
私が被災地で取材した後、
同じく陸前高田市で取材していたテレビ朝日の女性記者が、
鷺さんの取材を続けてくれていました。

彼女が取材した鷺さんの特集が近日中に全国放送されます。
HABスーパーJチャンネルです。

◆放送予定

11月8日(火)HABスーパーJチャンネル
(全国放送枠の午後5時56分-午後6時17分の間に放送予定)

ぜひご覧いただければと思います。