~甲子園への道~
今週のお題 「ボクらの夏」
おととい、社内の宴席で、今夏、高校野球を担当する後輩達に問われた。
「7年間、野球取材をして、一番印象に残っていることは何ですか?」
ふと脳裏に浮かんだのは、2人のピッチャーだった。
1人は愛情たっぷりの両親のもと、野球に没頭していた進学校のエース。
彼は、自宅近所で借りたガレージで、毎晩、自主練習をしていた。
新聞紙をまるめて作ったボールを、大きなザルにむけて何百球と投げ込む。
その様子を母親がビデオカメラで撮影。
帰宅後、栄養満点の夕飯を食べながら、VTRでフォームをチェックした。
勉強も手を抜かないのだろう。部屋にあった広告紙の裏面には隙間なく
英単語が書かれていた。家族一丸で、最後の夏をバックアップしていた。
その力はプロ野球も注目するほどのお墨付きだったが、翌春、日本トップの
大学に現役で進学していった。
もう1人は、両親を中学校時代に相次いで
亡くしたピッチャー。
地元の高校の監督から、身体は小さいが鍛えればものになるかもしれないと見込まれ、監督宅で下宿をしながら、野球を続けていた。
さっぱりとした部屋。干してあった練習着の胸や膝は擦り切れて透けていた。
野球ができることに感謝しているという彼の夢は、甲子園へ行って、プロ野球選手になること。支えてくれた人達に恩返しがしたいと静かに語ってくれた。
最後の夏、連投をものともせず投げきったが、1球の失投に泣き、甲子園は夢に終わった・・
しかしそんな彼の力を見ていた人がまたいた。
あるプロ野球チームのスカウトマンだった。
高校の教師出身という異色のスカウトマンは、ほれ込んだ彼のために
中止になっていたプロテストを強引に開催。テストでのマウンド度胸が
球団上層部の目にとまり、ドラフト指名をうけ夢のプロ野球選手となった。
「高校野球ひとつに、毎年よくそんなネタがあるものだ」と言われたが、
今年も石川の高校野球部員2234人、一人一人にドラマがあるはずだ。
どんな環境の高校生にとっても、目指すのは同じ「甲子園」。
ひとつの夢にむかって・・・ボクらの夏がいよいよ始まる
さて、進学した彼は、高校野球の監督になりたいと言っていた。
プロ入りした彼は2軍の試合に時々登板しているようだが、
叱咤激励してやってくれと、スカウトマンからメールがきていた。
取材者の端くれとしては、いずれ2人のピッチャーの
“甲子園への道のその後”を取材したいものだ。
富山 A.I
2010年06月29日