一瞬の思い出
今週のお題 「夏!」
九回一死二塁、得点は2対4。
もうひとりランナーが出なければホームランでも出ない限り同点にもならない。
とにかく塁に出よう。初球から狙いすましてセーフティバント、空振り。
二塁ランナーが大きく離塁しているのが見える。
キャッチャーからの送球がスローモーションのように見える。
アウトかセーフか、塁審が大きく手を広げる。セーフ、助かった。悲鳴、静寂、歓声。
私の夏の高校野球の記憶はそこで途切れる。たぶん、私はセカンドゴロか何かでアウトになり、そのあとのバッターも簡単にアウトになり、私たちの夏の大会は終わった。
確か、かなりの時間、泣いたし、かなりの時間悔いもした。けれども、憶えているのはその一瞬のプレーだけなのだ。何故なのかはわからない。試合の間中、おかしいなあ、負けるはずがないのになあ、とふらふらと考えていたように思うのだけど、とにかくそのことしか憶えていないのだ。
甲子園が始まった。4028校のうち、4027校は平等に1回だけ負ける。長嶋茂雄は「高校球児たちは、みんな平等に1回だけ敗戦という贈り物を野球の神様からいただくんです」と言った。
私の一瞬の思い出も野球の神様からの贈り物なのだ。
東京 N
2010年08月12日