3月放送

「最新医療の部屋」

前立腺がん治療

健康の館最終回のテーマは前立腺ガン治療です。
前立腺は男性だけにある臓器ですからね。
女性だけに子宮がんがあるように、男性だからこそ起こるガンなんです。
前立腺ガンという名前は、最近ちょくちょく耳にするようになりましたが、現在どんどん伸びていて、将来的にも増え続ける可能性が高いんです。
それは世の中が高齢化社会になっているからなんです。
というのも実はこのガンは高齢者に多いんです。
それと以前は、住民健康診断に前立腺ガンを調べる項目がなかったんですが、近年その項目が増えたことと診断技術が向上したことで、病気が発見されやすくなったというのも増加の理由の一つなんです。
以前は前立腺を全部摘出する方法が多かったんですが、今回ご紹介する小線源療法(しょうせんげんりょうほう)では、前立腺は残したままということが可能になったんです。

今年3月、金沢医科大学病院放射線治療センターに早期前立腺ガンの画期的な治療方法が導入され県内で初めてその治療が行なわれました。
その治療法とは小線源療法(しょうせんげんりょうほう)と呼ばれる放射線治療の一種で前立腺の中に放射線を発するカプセルを埋め込み直接がん細胞に当てて死滅させるというものです。
では、前立腺ガンとはどんな病気なのでしょう?

 

■金沢医科大学病院泌尿器科 宮澤克人助教授にお聞きしました。
Q 前立腺がんとは?
A 前立腺がんは男性だけにある臓器で、がん細胞の集団である腫瘍が前立腺にできることから始まるものです。
早期では症状がまったくというほどありません。
しかし進行しはじめると、尿が出にくい、排尿の回数が増える、下腹部に不快感を感じる、排尿時に痛みがある、尿や精液に血が混じるといった症状が見られ、さらに進行すると骨に転移して、腰や背中に痛みを感じるようになります。

 

前立腺は膀胱の真下にあり、大きさはクルミほどで精液の一部を作り出す役割があります。前立腺がんの原因は未だ不明ですが老化による男性ホルモンと女性ホルモンのバランスの崩れや食生活の欧米化で動物性の脂肪やタンパク質の摂取が増えたからではないかと言われています。年齢としては50代以上、高齢になるほど多いガンです。

前立腺がんの治療方法は、その進行度合いによって異なります。
開腹手術で前立腺を全て摘出する方法や、外側から放射線を照射する方法
また、進行が進んでいる場合は、ホルモン療法を行なってきました。
しかし、手術は全身麻酔が必要で術後2週間から1ヶ月入院しなければならず、前立腺を摘出すると、尿漏れや勃起不全になる場合がありました。
また、放射線照射は患部以外のまわりも放射線を浴びることになり他の臓器への影響が心配されました。
そんな中で、小線源療法は大いに注目される治療法となったのです。

 

■金沢医科大学病院泌尿器科 宮澤克人助教授にお聞きしました。
Q  開腹手術のデメリットは?
A  小線源療法の一番のメリットは、体に対する負担が少ない、高齢の方が多いので手術が困難な方でも安心して治療が受けられます。
入院期間も僅か3〜4日、とても短くてすみます。
また、退院後は、ほぼ入院前と同じ状態に社会復帰することが可能です。

 

小線源療法で使われるカプセルは、直径1ミリ、長さ5ミリのチタン製。
この小さなカプセルには「ヨウ素125」という微弱な放射線源が入っています。
これが体内に埋め込まれると、3〜4ヶ月かけてガンを含む前立腺全体に放射線が照射されます。

 

■金沢医科大学病院放射線科 的場宗孝助教授にお聞きしました。
Q なぜ、がん細胞にだけ働きかけることができるのですか?
 痛み、違和感、安全性は大丈夫なのですか?
A 小線源療法に使われるカプセル(シード線源)は、1個では放射線のエネルギーとしては微量で、さらにカプセルの周囲1cm程度までしか放射線は届きません。しかし、このカプセルが60~90個、前立腺に埋め込まれた場合、全体の放射線のエネルギーとしては前立腺癌を死滅させるのに十分な強さとなり、しかも前立腺の外側5mm程度までしか放射線が届きません。小線源療法が適応となる早期の前立腺癌の場合、がん細胞は前立腺内に留まっています。従って、小線源療法にて直腸などの前立腺周囲臓器への放射線の影響が少なく安全に前立腺内のがん細胞に多くの放射線を照射できます。もちろん、カプセル留置後の痛みや違和感は感じられません。

 

では小線源療法の施術の方法を見てみましょう。
まず局所麻酔をかけ、仰向けになった患者の肛門よりやや上の部分から前立腺内にインプラントニードルと呼ばれる長い針を差し込み、コンピュータで計算されたとおりエコーの画像を見ながらミックアプリケーターという挿入機でカプセルを埋め込んでいきます。
局所麻酔のため患者とコミュニケーションをとりながら施術を行なう事ができます。
カプセルの数はおよそ60〜90個。前立腺の大きさによって増減します。
治療はおよそ2時間前後で終わります。

 

■金沢医科大学病院放射線科 的場宗孝助教授にお聞きしました。
Q 放射線物質はどのくらいでなくなるのですか?
 また、1度の埋め込みでがんが消滅するのですか?
A 前立腺内に留置されたカプセル(シード線源)の放射線は約10ヶ月で消失します。この間、ガン細胞は放射線照射を受け続け消滅していきます。従って、1度の埋め込みで十分な治療効果が得られ、前立腺全摘術と治療成績はほぼ同等です。

カプセルを埋め込んだからといって体自体が放射能を持つわけではないので、尿や便、汗、唾液などの分泌物に放射能はありません。普段どおり人と接してかまいません。

 

■金沢医科大学病院泌尿器科 宮澤克人医師にお聞きしました。
Q 第一号の患者さんが施術をした方の経過ときっかけとは?
A 3月初旬に当院で県内初の小線源療法の施術を行ないましたが、経過は良好です。
その方も施術の翌朝から普通食を食べて歩行もできました。治療翌々日には退院され今は完全社会復帰されています。
小線源療法は大変優れた治療法ですが早期ガンにのみ大きな効果があるもので、進行した前立腺ガンの患者様には治療を行う事はできません。最近では会社や住民検診などで前立腺ガンの血液検査が普及していますが、どのような疾患も早期発見が最も重要です。みなさまも検診などで早期発見に務めていただきたいと思います。

 

さて、この小線源療法をいち早く導入した金沢医科大学病院では、前立腺がんだけでなく、様々ながんの診療を支えるために最先端の医療機器を続々と導入しています。

今年2月に開設された画像診断センター。
ここには、「64列マルチスライスCT」と呼ばれる最新のCT装置が導入されました。
CTは体に様々な角度からX線をあてて水平方向に輪切りにした断層面を撮影する装置です。
この「64列マルチスライスCT」は高速で一度に最大64枚の断層撮影が可能で、しかも1枚あたり0.5ミリという大変細かなデータが収集できるので、高精度の立体画像を作成することができ脳の血管はもとより、心臓の血管まできれいに映し出すことができます。

このCTによるがんの検査はいわば、がんの形状を調べる検査。
これに対し、がんの細胞がどれだけ活動しているかを調べる検査が「PET」と呼ばれる検査方法。

 

金沢医科大学病院のPETセンターではこのPET検査とCT検査を融合させ2つの機能を併せ持つPET-CT検査を今年2月から導入しました。
これにより、がんを「形状」と「細胞の活動状況」の2つの方向から診る事が出来、より正確ながんの診断が可能になりました。
小線源療法をはじめとする、最新鋭の医療技術の数々。
今後もますます高度な診療が期待できます。